旅の手荷物に本を

1.はじめに

『旅』の手荷物のなかに『本』

旅にいっそう雰囲気がでます。

SNSにあげても、センスの良さが際立ち、差別化ができるでしょう。

(いいね10件増が見込めます)

今日は、アーネスト・ヘミングウェイの誕生日。

彼の作品を取り上げます。

 

ヘミングウェイ短編集 (1) (新潮文庫)

ヘミングウェイ短編集 (1) (新潮文庫)

 

 

 

2.引用文 

  ヘミングウェイ短編集(一) 心が二つある大きな川(一)・(二)

 

荷物の重みが肩の上部にかかるようにすこし前かがみになって、・・・線路と平行な道を歩いていった。

 

 重い荷物のために肩に痛みを感じながら、彼はその道を歩いた。道はずっと登り坂がつづいていた。坂道を歩くのはつらかった。筋肉が痛み、暑さもひどかったが、ニックは楽しかった。考える必要も書く必要も、そのほかのどんな必要も、何もかも背後に捨て去ってきたのだ。

 

丘の端に立って、遠くの川のほうまで、あたり一帯を見渡してから、道からそれて山腹をくだりはじめた。足の下の土は歩きよかった。

 

 

盛りあがった森林のなかには、下ばえががまったくなかった。松の幹は、まっすぐのびているか、たがいによりかかるように傾くかしていた。 

 

ニックは荷物をおろして木陰に寝ころんだ。仰向けに寝て松の木立を見あげた。からだをのばすと、首や背中や腰の筋肉がゆるんだ。背中にあたる大地の感じが気持よかった。

 

テントの開いた入口に蚊よけの寒冷紗を張った。包みからとり出したいろんなものを持って、蚊よけの下をくぐって中にはいり、それをテントの傾斜の下にあたる寝床の頭のところへおいた。テントのなかには、茶色のズックごしに明かりがさしこんでいた。ズックのにおいが気持ちよかった。これだけで、なにか神秘的な、くつろいだ気分になった。テントに這いこむと、ニックは楽しかった。

  

手早くそば粉に水をまぜて、よくかきまわした。そば粉がコップ一杯に、コップ一杯の水だ。罐から脂のかたまりをすくって熱くなったフライパンに落とすと、じゅうじゅう音をたてた。煙の立っているフライパンに、練ったそば粉をそっと流しこんだ。 

・・・こねたそば粉を全部使った。それで、大きなのが一つと小さいのが一つできた。

 

一匹ばったが瓶から頭をつき出した。触覚がゆれた。・・・ニックは、頭をつかんで手に持ち、顎の下に細い釣り針を刺し、胸から腹の最後の一節まで通した。ばったは前脚で釣り針をつかみ、たばこのやにのような汁を吐き出した。

 

ぐいと長い引きがきた。ニックは身がまえた。竿にいのちが通い、折れんばかりにまがった。・・・

圧力を加えると、糸が突然ぴんと張って、丸太の向うで、おそろしく大きな鱒が水面高く跳ねあがった。・・・テグスが切れていた。糸にすこしも弾力性がなくなり、柔軟性をうしなって固くなるとき感じに間違えなかった。

口がかわき、がっかりした思いで、ニックは糸を巻いた。

 

彼は何か読むものを持ってくればよかったと思った。本を読みたい気持ちになった。・・・彼は川下をながめた。

 

 

3.おわりに

物語に自らを投影しながらの旅を。

非日常を。

楽しんでください。

終わります。